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 日曜日だった。

 その日は今にも雨が降り出しそうな曇りの日。嫌な予感は何となくしていた。
僕は駅の近くにある洋食屋でチキンとシュリンプのチーズ和えをオーダーし、その日見る映画のことを考えていた。そんな時に小悪魔ちゃんは現れた。

 僕に何の断りもなく、向かいの席に座ると店員を呼びつけ、小悪魔ちゃんはチーズハンバーガー・セットを注文した。
おいおい、どうせそれは僕がまた支払うんだろう。
だったら、せめて愛想笑いを僕に浮かべてみるとか、そういうアイデアは思いつかないものだろうか。
いやもしくは、僕が気づかないだけで小悪魔ちゃんは僕の機嫌をとるための振る舞いをしているのかもしれない。
小悪魔ちゃんの頬は、数十年も干されっぱなしになった干し柿のように冷たく硬い。
だから、愛想笑いくらいではきっと頬は持ち上がらないのだ。
小悪魔ちゃんはマンガやアニメに出てくる悪魔というよりは、コオロギに似ている。秋の夜長にリンリン鳴くあれだ。だから、目がギョロっと大きくて真っ黒い。

 オーダーが済むと、小悪魔ちゃんはたいてい僕のことを責め立てる。
「お前は人との約束をよく破るよな」
とか、
「人のことを出し抜いて面白がってるよな」
とか。
その日も例外でなく、
「将来、髪の毛が薄くなるのが目に見えるから、育毛剤を使うべきだ」
と極めてプライベートな所まで言及してきた。
悔しいけれど僕は言い返せない。
思い当たる節があるからだ。
こうやっていつも、小悪魔ちゃんがテーブルの上のボールを支配している。

 そうしているうちに小悪魔ちゃんのチーズバーガーが運ばれてきた。
冷めてしまうとあれだから先に食べなよ、と僕は小悪魔ちゃんを促した。
厚さが15センチくらいあるチーズバーガーにかぶりつく小悪魔ちゃん。
ほんの数分で平らげてしまうと、水をゴクリと飲んで
「じゃあ、またな」
と席を立った。
僕のチキンとシュリンプのチーズ和えはまだやってこない。

 ところで前に、マクドナルドかどこかで頬をぴくぴくと痙攣させていた小悪魔ちゃんを見たことがある。
あれは、もしかしたら愛想笑いの練習だったのではないか!
 小悪魔ちゃんがちょっとだけ憎めなくなった。

高野 徹

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