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「申し訳ございません。ハンガーは満員でございます」
これは東京国際映画祭にて、僕がチケット売り場のお兄さんと交わしたひとコマだ。
バイトが終わったあと時間も間に合いそうだったので、イギリス映画の『ハンガー』を見ようと東京国際映画祭を訪れたのだが、チケットが売り切れで見られなかった。
映画を見にいって満席だったなんていう体験はこの時がはじめてだった。
話題作の映画であったし、見られなかったのは残念だが、エレベーターに乗って会場を後にしている時の僕の頬は自然と緩んでいた。
秋は夏と並んで映画祭の季節だ。各映画館で様々な特集上映を展開する。
例えば、アジアの若手の映画を集めてコンペティションをする「東京フィルメックス」、日本・中国・韓国の学生の作品が楽しめる「横濱学生映画祭」、さらには性欲的生活をテーマにした「イメージリングス背徳映画祭」というのもある。
映画祭に僕が心引かれる理由としては、普段の映画館での上映とはまた違った楽しみ方があるからだ。
まずひとつに、映画を作った監督や作家と話ができることが挙げられる。通常、映画祭では映画の上映後に「ティーチイン」といって、観客がマイクを持ち、映画の感想や質問を作り手にぶつけられる時間が設けられる。
このティーチインとは実にスリリングなものだ。
たいていは「そういう見方もあったのか」と納得させられる感想や質問なのだが、時には会場全体が凍ってしまう厳しい批判が観客席から飛び出すこともある。
比率から言うと、そういう厳しい意見を言う人には中年のおばさんが多い。きっと、とても映画好きであったり、子育てや夫のことでストレスが溜まっているのだろう。
しかし僕はそういうおばさんが大好きで、どんどん増えていって会場を凍らせてほしいと思う。
なぜなら、そのような時にはじめて、監督の手腕が試されるからだ。
作り手は作品だけでなく、作品を説明する言葉も持ち合わせていなければならない。
また、会場を出ても映画祭は終わらない。
ロビーには今見たばかりの映画の監督や俳優がいることが多く、彼らを捕まえて立ち話をするのも楽しい。
映画の感想を言ってあげると、待ってましたとばかりに喜んでくれるし、話が弾むと撮影秘話や恥ずかしいエピソードをこっそりと教えてくれる。
今年のとある映画祭では、「僕は女子高生が大好きだから、女子高生を撮り続けるんだ」と語っていた監督もいて面白かったが、正直、一歩引いてしまった思い出がある。
そして何といっても、僕が映画祭で一番好きな瞬間は映画祭に行く前だ。
いろんな映画館で集めてきた映画祭のチラシやパンフレットをいっぱい広げて、机の上を目がチカチカするくらい色鮮やかにする。
あか、しろ、あお。どの映画を見にいこうか本気で悩む。
むらさき、きいろ、みどり。
バイトや学校の授業をサボらないとあの映画が見れない、と悩む。
そして、今週の映画祭予定表なんかを作ったりするが、予定通りに全部見られたことはまだ一度もない。
高野 徹
語りリンクへ
バイトが終わったあと時間も間に合いそうだったので、イギリス映画の『ハンガー』を見ようと東京国際映画祭を訪れたのだが、チケットが売り切れで見られなかった。
映画を見にいって満席だったなんていう体験はこの時がはじめてだった。
話題作の映画であったし、見られなかったのは残念だが、エレベーターに乗って会場を後にしている時の僕の頬は自然と緩んでいた。
秋は夏と並んで映画祭の季節だ。各映画館で様々な特集上映を展開する。
例えば、アジアの若手の映画を集めてコンペティションをする「東京フィルメックス」、日本・中国・韓国の学生の作品が楽しめる「横濱学生映画祭」、さらには性欲的生活をテーマにした「イメージリングス背徳映画祭」というのもある。
映画祭に僕が心引かれる理由としては、普段の映画館での上映とはまた違った楽しみ方があるからだ。
まずひとつに、映画を作った監督や作家と話ができることが挙げられる。通常、映画祭では映画の上映後に「ティーチイン」といって、観客がマイクを持ち、映画の感想や質問を作り手にぶつけられる時間が設けられる。
このティーチインとは実にスリリングなものだ。
たいていは「そういう見方もあったのか」と納得させられる感想や質問なのだが、時には会場全体が凍ってしまう厳しい批判が観客席から飛び出すこともある。
比率から言うと、そういう厳しい意見を言う人には中年のおばさんが多い。きっと、とても映画好きであったり、子育てや夫のことでストレスが溜まっているのだろう。
しかし僕はそういうおばさんが大好きで、どんどん増えていって会場を凍らせてほしいと思う。
なぜなら、そのような時にはじめて、監督の手腕が試されるからだ。
作り手は作品だけでなく、作品を説明する言葉も持ち合わせていなければならない。
また、会場を出ても映画祭は終わらない。
ロビーには今見たばかりの映画の監督や俳優がいることが多く、彼らを捕まえて立ち話をするのも楽しい。
映画の感想を言ってあげると、待ってましたとばかりに喜んでくれるし、話が弾むと撮影秘話や恥ずかしいエピソードをこっそりと教えてくれる。
今年のとある映画祭では、「僕は女子高生が大好きだから、女子高生を撮り続けるんだ」と語っていた監督もいて面白かったが、正直、一歩引いてしまった思い出がある。
そして何といっても、僕が映画祭で一番好きな瞬間は映画祭に行く前だ。
いろんな映画館で集めてきた映画祭のチラシやパンフレットをいっぱい広げて、机の上を目がチカチカするくらい色鮮やかにする。
あか、しろ、あお。どの映画を見にいこうか本気で悩む。
むらさき、きいろ、みどり。
バイトや学校の授業をサボらないとあの映画が見れない、と悩む。
そして、今週の映画祭予定表なんかを作ったりするが、予定通りに全部見られたことはまだ一度もない。
高野 徹
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